女子中学生Cさんのアセスメント事例

受験を通して自分の殻を破る

伸び悩み、不安な毎日

公立高校受験まで、あと1ヶ月に迫ったCさんはスランプに陥っていた。とても真面目でコツコツと勉強を積み重ねることができるCさんは、学校の成績はオール5、その地域で最も学力の高い高校を志望していたが、合格点まで20点ほど足りない状況。しかも、スランプで模試の点数が芳しくない。焦っていた。毎日不安でいっぱいで、自分を卑下するような愚痴が増えていた。見かねた先生がアセスメントを受けることをCさんに勧めた。

アセスメントを通して、Cさんの脳の予測の安定性と不安定性を説明した。安定性は自分に自信がある内容。受験勉強で言えば、進んで取り組んできた基礎問題。「これは知っている」と自覚ある問題は持ち前の処理能力で素早く解くことができる。一方、不安定性は、苦手意識のある数学の応用問題など、閃きが必要な問題だったり、問題文を一度解釈してから解いたりするような問題であった。Cさんは、これらの問題を解く思考力が足りないわけではない。しかし、実際には点数に結びつかない何故か??

脳の本能を乗り越えなければ、人生の醍醐味にはいけない

脳は、予測誤差の最小化を目指す臓器としての特性がある。何が起こるか分からない不確実な状況では、「サプライズ」が多く、脳にはストレスになる。Cさんは、自他共に認める真面目な性格で、出された課題は誰よりも早くこなす。友達と揉めることも、先生に叱られることもほぼないという。しかし、問題はそういう自分に生きづらさも感じているということだった。

脳は、予測困難性(サプライズ)を避ける特性がある。しかし、一方で人生には不確実な出来事がもりだくさんだ。そして、人生の醍醐味は、予測できないところにある。子供の時、行っちゃいけないと言われたところに行ったら、怖くなった、それでもそこを進み続けると見たこともないような絶景に出会う。そこを秘密の場所と呼ぶというような危なっかしくも可愛らしい、この冒険心・好奇心は、人生の推進力になるものだ。

人間関係もまた、叱られたり喧嘩をしたりした後に深まるということもある。叱られる、喧嘩をすること自体は好ましくないかもしれない、しかしその先にしか得られない妙味があるのも確かだ。

Cさんは自分を卑下してしまうところがあるという、もっと伸び伸びと生きたい、挑戦してみたいという気持ちが潜在していると弊社は推測した。問題は、その過程で、脳が不確実性というストレスを乗り越えられるかである。

Cさんの不道徳をあえてチクリ、「挑戦しなさい」

そこで、弊社はCさんの教育者と一緒に以下の策を講じた。

Cさんに、上記のCさんの心の動き方を説明し、そのうえで「挑戦者」になりなさいという助言をした。さらに、不安になるというCさんに「自分の実力が足りてないのに、あたかも受かるはずの人がミスをして落ちるかもしれないとでもいうように不安を抱いているのは、傲慢ではないか」とチクリと刺した。不安という感情の予測を回避させるために、今の「不安」という感情に不道徳性を関連させたのだった。

挑戦者は、自分の安全な場所にいるのではなくて、果敢に前に進む。解ける問題を繰り返しとくのではなく、解けない問題を解けるようになること、受験前であっても応用問題は1時間でも考え続ける、時間を惜しまないように伝えた。

Cさんは自分の心の状態を知ったこと、そのことを先生に知ってもらえたことで安心感が強くなり、先生の指導の下、具体的に苦手な数学の問題の解法獲得に時間を優先的に使う戦略で見事合格を勝ち取った。

驚いたことにアセスメントを受けた日から、残り1ヶ月の受験までの期間、Cさんは不安という気持ちを一度も感じなかったというのだ。前向きに受験日までを迎えることができた。

アセスメントを経て「挑戦者」であるマインドセットができたことは、Cさんの人生の転換点になったのではないかと私たちは考えている。Cさんは、受験を終えて塾のアンケートで、高校生の抱負の欄に、「やったことがないことに挑戦したい」と書いたという。Cさんのこれからが楽しみだ。

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