男子児童Bさんのアセスメント事例

自我の芽生えに寄り添うことが生み出したブレイクスルー

優しいBさんの課題

Bさんは、一緒に遊ぶ友人が多い人気のある小学校6年生の男子児童でした。Bさんは、周りを見て自分がどのように振る舞ったらいいのか?を考えて行動する力に長けています。気遣いができて、優しくて人気があります。象徴的なのは、運動会の日の日記に、自分や自分のクラスのできごとの思い出だけでなく、3年生の踊りが上手で感動したと書いていたことでした。他の学年のことも書いているのは、クラスでBさんだけだったといいます。

一方で、Bさんの言動には心配なところもありました。ある日の日記には、「今日は〇〇くんと〇〇くんと遊んだけど、面白くなかった、本当は家に帰りたかった」と書かれていました。また、Bさんは担任の先生の前では無口になって固まってしまう。友達と仲良くはしゃいでいる時も、担任の先生が来た瞬間、ピキッと体が固まって黙ってしまう特性がありました(場面緘黙)。

担任の先生は、「Bさんを心配しつつ、その優しさを見ていて、今後の成長がとても楽しみでもある。Bさんがもっと良くなるために何かしてあげられないでしょうか?」と弊社に相談されました。弊社は、Bさんの情報を匿名化した形でアセスメントを行いました。

Bさんの自我に寄り添え

Bさんの情報をもとに、Bさんの脳がどんな予測をしているのか?を分析していきます。

Bさんは、他者の気持ちを推測する力が優れています。周囲の人が何を考えているかを幅広く考えようとする視野の広さ(違う学年の踊りにも目がいく)と、実際に相手の気持ちを深く理解して、気遣いができる優しさがBさんの人気を支えています。

一方で、Bさんは友達の前で自分の意見を主張することが苦手です。嫌なら一緒に遊ばなければいいというのは極論ですが、自分も楽しめるような工夫はできるようになった方がいいでしょう。しかし、Bさんにはその経験が不足していて、どのように自分の意見を主張すればいいか分からないと推測されます。

Bさんは、シングルマザーの家庭で3人兄弟の末っ子です。大人の男性と話した経験は少なく、兄弟の遊びもお兄ちゃんに合わせるのが自然になっていました。Bさんの脳は、他者に自分の意見を伝えるという緊張や慣れていない男性の担任の先生を前では、どう行動したらいいのか予測ができないという特徴があると推測されました。

そんな中で、思春期になってBさんには自我が芽生えてきました。他者と関係している自分を見る目である自意識は、自分の意見に対する自覚を生みます。これまで他者の気持ちを優先してきた子供時代の自分と、自我との対立の葛藤がBさんの日記には描かれていました。

Bさんは、場面緘黙になってしまう一方で、担任の先生に日記では本音を書くことができています。弊社はここに注目して、担任の先生にBさんの自我についての対話の時間を儲けるように提案しました。

担任の先生からBさんに、今までなかった気持ち、悩みが芽生え出す時期であることを伝え、友達や家族とのことについて、Bさんの気持ちを聞いてもらいます。Bさんは、どの友達といる時は自分の意見を言えて居心地がいい、どの人の前では自分の気持ちをうまく言えないという正直な気持ちを担任の先生に吐露してくれました。担任の先生は、その気持ちを受け止めて、その上で友人関係には自分の気持ちを伝えることも大切であると伝え、Bさんを支えていくことを伝えました。

Bさんは、その次の日から、担任の先生の前で場面緘黙になるということがなくなりました。担任の先生の前でも、友達と楽しく遊べるようになったのです。自我を受け止めてもらえたことが、子供時代からの無邪気な自分を見せるスイッチになったのです。

卒業後も続く関係、教育者から人生の仲間へ

Bさんは、友達にも自分の気持ちを伝えられるように成長していきました。友達と喧嘩するようになったということではありません。Bさんは、今年、中学生になりました。部活選びの時に、仲の良い友達はみんなサッカー部に入るとのことでBさんもサッカー部に誘われたそうです。Bさんは、悩んだ末に自分が入りたいテニス部に入ったとのことです。

担任の先生は、その話を聞いてBさんの成長を実感したそうです。小学校を卒業してからも、Bさんは担任の先生を訪ねて、学校のこと・勉強のことをいろいろと相談するそうです。弊社の心の成長アセスメントが、Bさんの成長と、Bさんと担任の先生の信頼関係を深める機会に貢献できた事例です。

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